たけの子第2保育園  よい歯を作る健康教室   2002年12月19日 pm4:00~

 本日は、お忙しいところお集まりいただき有り難うございます。今日は虫歯に強い歯を作るフッ素の話を致します。途中濃度のことで、いろいろ数字が出てきますが、要点さえつかんで下されば結構です。

 まず基礎知識として、歯と虫歯について復習してみたいと思います。

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 ここが水晶より硬いと言われるエナメル質です。ここが象牙質です。ここがよく神経と言われる歯髄です。糖類を食べた細菌の出す酸で歯がとかされていくと、このようにC1C2C3と深くなっていきます。

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 歯は、このように細菌、糖分、時間そして歯質の4つに悪い条件が重なると、虫歯になってしまいます。フッ素はこの中の歯質を強化する働きをもっています。下の絵は歯垢を作る有名な連鎖球菌ミュータンスです。

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 フッ素は、地球上のいたるところにある元素なので、このように私たちのが普段口にしている食品にも微量に含まれています。成人では、1日に1mgから3mgぐらい食事からとっています。1000mlの缶ビールを一本飲むと、0.8mgとったことになります。

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 それではなぜ、フッ素がむし歯予防に効くことがわかったのでしょうか。アメリカは、移民の国です。1901年イタリアナポリからの移民に褐色斑をもつ歯のものがいることが報告されました。コロラド州にもそのような歯をもつ人たちがいる地区が発見されました。そして、そのような歯をもつ人たちに虫歯が少ない事もわかってきました。

 その後、この原因は飲料水中のある一定以上の濃度のフッ素だということがわかりました。火山がある地域の地下水には、フッ素が多く含まれていたのです。

 さらに、先ほどのビール程度の濃度のフッ素を水道水に添加することによって、褐色斑も起こらず丈夫な歯を作ることがわかり、1945年、日本で言えば終戦の年ですが、アメリカ、カナダで、上水道へのフッ素添加が実施され、虫歯を半分以上、減らすことができました。この方法は37か国に広まり、現在も続いています。

 ちなみに、日本ではこの方法はやられていませんが、相模原では米軍基地内でされているそうです。

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 先ほど申しました一定以上の濃度のフッ素を毎日摂取したためにできる、褐色斑の歯についてですが、これは歯が、顎の中で、カルシウムやリン酸を取り込んでつくられる時にエナメル質のみに起こるものです。口の中にすでに生えている歯に高濃度のフッ素イオンを作用させても決して起こりません。

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 親知らずを除く、エナメル質は6,7歳までに完成されます。水源のフッ素の濃度の高い地区、日本では、阿蘇山麓や桜島などで、このころまでに必要とされる以上のフッ素を摂取することのないように上水道のフッ素の濃度をコントロールしています。

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 つぎに、フッ素がなぜ歯を強くするのか、酸に溶けにくくするのか、考えていきたいと思います。
歯は、カルシウムとリン酸そして水酸基からなる、ハイドロキシアパタイトといわれる結晶構造から出来ていると言われています。

 ところが、実際の歯では、カルシウムがナトリウム、リン酸が炭酸に置き換わったり、カルシウムが欠落していたりする、不完全なハイドロキシアパタイト結晶からなっています。
歯の形成期に、適した濃度のフッ素入りの水道水を取っていると、この不完全なハイドロキシアパタイトができにくくなります。

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 また、純粋なハイドロキシアパタイト自体、水酸基を持つので酸や水に溶かされやすい性格を持っています。

 歯が、フッ素イオンにさらされることによって、水酸基がフッ素と置き換わり、より安定したフルオロアパタイトとよばれるものになります。酸に対して抵抗力を持つようになります。

 さらに、フッ素化されると、不完全なハイドロキシアパタイト構造の炭酸イオンを追い出し、不正格子が修復され結晶性が向上します。

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 このように、フッ素イオンが、エナメル質内、特に表層に濃度高く取り込まれることによって、歯は耐酸性を増すことになります。

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 さらに、フッ素イオンが虫歯のなりかけのところに作用すると、唾液中のカルシウムイオンやリン酸イオンが取り込まれやすくなり、そして、いったん溶けた部分が、再び硬くなる再石灰化といわれる現象が起こります。

上の写真が、フッ素入り歯磨き粉を使ったもので、再石灰化が起こっています。下がフッ素の入っていない歯磨き粉を使ったものです。

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 ここまでの話をまとめます。フッ素が存在すると、歯にはフルオロアパタイトの生成、結晶性の向上、再石灰化促進が起こります。このため、歯質の強化、耐酸性向上により虫歯が起こりにくくなります。

 また、フッ素は、虫歯菌に直接働き、酸を作ること、歯垢を作ること、を抑制します。

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 さて、日本で歯を強くするためにに使用できるフッ素の応用方法は、上水道のフッ素化などによるものを全身応用というのに対し、局所応用といわれる3通りの方法です。

 ひとつは、歯科医師や歯科衛生士が行う、高濃度のフッ化物歯面塗布法です。

 ふたつ目は、毎日一回ぶくぶくうがいするフッ素洗口法、これは、ミラノールという商品名のものが売られています。

 三つ目は、フッ素入りはみがき粉、フッ素添加歯磨き剤の使用です。最近はほとんどのは磨き粉にフッ素が添加されています。

 フッ素は本当に効くのか?どうかですが、この棒グラフは、ふたつ目のフッ素洗口法による結果です。新潟県では、20年以上のフッ素洗口の歴史があり、新潟県内の小学6年生、24万人の調査によると、フッ素洗口を行わない小学校の児童に比べて、行った学校の児童の虫歯の本数は、半分であるという結果が得られています。

 フッ素入り歯磨き粉は、20から30%の抑制率、歯科医院の歯面塗布は20から35%の予防効果があると言われています。

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 次にフッ素の安全性ついてご説明いたします。

 先に述べましたように、アメリカなどでは上水道のフッ素化行われています。これは、フッ素濃度として1ppm前後を添加しています。1ppm というのは、1000mlの水又は、1000gのモノの中に1mg入っているということです。

 1リットルのペットボトルとキッチンのバネばかりを頭に描いてみて下さい。

 キッチンのバネばかりは、小さい目盛りが1グラムですから、1ミリグラムは、その1000分の1です。1リットルのペットボトルのお水に、キッチンのバネばかりでは計れないようなわずかな量のフッ素が入っていることになります。

 歯みがき粉はどうでしょうか?これにはだいたい1000ppmのフッ素が入っています。1000gの歯磨き粉があるとすれば、この中にフッ素が、1000mg、グラムでいうと1グラム、キッチンばかりで計れる量が入っています。

 さて、普通大人は、歯みがき一回につき1g位の歯磨き粉使用します。歯磨き粉1000gにフッ素1000mgですから、歯磨き粉1gにフッ素は1mg入っています。

 もし、使った歯磨き粉をゆすがないでゴクリと飲み込んでしまう場合、フッ素だけでいえば、アメリカでフッ素入り水道水を1リットル飲んだのと同じになります。

 また、外国の話ですが、上水道のフッ素化されていない地域で、こどもに毎日0.5mgとか1mgのフッ素入りドロップをなめさせる方法が採られています。

 これは、フッ素だけでいえば、歯磨き粉を0.5gとか1gすなわち歯ブラシの毛の生えているところに半分とか全面につけて、食べてしまうのと同等です。

 こどもはみがき粉を、おいしくて食べてしまう子がいます。最初に申しましたように、7歳くらいまで、過剰なフッ素を採っていると、火山地域の子どものように褐色斑のある永久歯になってしまいます。歯磨き粉を毎日2gとか、食べているとそうなってしまいます。

 また、嘔吐、腹痛、下痢などをおこすフッ素の急性中毒というものがあります。これは、歯磨き粉でいえば、体重10㎏の子が20gを、体重20㎏の子が40gを一気に食べた場合、起こります。こんなとんでもないことが起きてしまった場合、フッ素はカルシウムと結びつきやすいので牛乳を飲ませてはかせます。

 フッ素の安全性は、量の問題と結びついています。ちゃんと決められた量を守り、非常識なことをしなければ、問題ありません。

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 歯ブラシにこんな感じに盛ると、大人用ブラシ0.5g 子供用ブラシ0.3gです。大人の場合もう少しつけた方がよいです。

 歯磨き後のうがいは、フッ素イオンを口の中に残すため過度に行わないようにします。3~4秒の洗口を2~3回にとどめ、30分は飲食を控えて下さい。そういった意味で就寝前のフッ素入り歯磨き剤の使用は効果的です。

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 さて、フッ素を利用する方法には、フッ素濃度約10000ppmのフッ化物面面塗布法、約250ppmのフッ化物洗口法、約1000ppmのフッ化物入り歯みがき剤の使用がありました。

 また追加すると、商品名レノビーゴとよばれる100ppmのフッ素入りスプレーがあります。これは、うがいのできない小さい子に安全に使えます。濃度が低いので1日3回くらい使用した方がよいです。

 フッ素塗布は、年一・二回の使用でも予防効果が得られますので、ぶくぶくうがいのできない低年令児に適しています。

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 また、萌出後数年の歯は未成熟な状態といいまして、酸に溶けやすく虫歯になりやすい反面、フッ素が一番取り込まれやすい時期でもあります。

 虫歯になる前に生えてきた歯に塗布していくと考えます。

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 高濃度のフッ素は、低濃度のものと反応が異なるため、フッ素を塗ってもらったら30分間飲んだり食べたりしないことが効果を上げるために特に大切です。

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 先に述べましたように、フッ素洗口法は、新潟の小学校などで集団で実施され効果を上げている方法ですが、家庭でも使用できます。

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 フッ素洗口剤ミラノールは、分包されている粉を200mlの専用容器に溶かしたものを使います。
歯をよく磨いた後、一日一回、キャプで計った5~10mlを口に含みぶくぶくうがいを約30秒間し、吐き出します。

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 ご家庭で継続できれば、とても効果的です。

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 これらの方法、フッ化物面面塗布法、フッ化物洗口法、のフッ化物入り歯みがき剤の使用を、年齢に応じて選択します。
 また、これら方法をいっしょに行うことは、さらに虫歯になりにくい歯をつくると、考えます。

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参考文献
これ一冊でわかるフッ素の臨床応用
        可児瑞夫 クインテッセンス出版
口腔保健のためのフッ化物応用ガイドブック
        日本口腔衛生学会フッ素研究部会 口腔保健協会
フッ化物と口腔保健
        WHO 一世出版
フッ素洗口手帳
        神奈川県 神奈川県歯科医師会   など